「生物はなぜ誕生したのか」(A NEW HISTORY OF LIFE)2015年 | ||||||||
はじめに | ||||||||
この本は1990年代以降の知見を反映しており、次の3点に重きを置いて記述する。 @環境の激変、A酸素、二酸化炭素、硫化水素、B生態系 |
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第1章 時を読む | ||||||||
地質時代区分の概要説明(重要単語参照) | ||||||||
第2章 地球の誕生──46億年前〜45億年前 | ||||||||
地球型生命に影響を与える重要な要素として炭素循環(短期、長期)(重要単語参照)、惑星サーモスタット(重要単語参照)、二酸化炭素と酸素の割合などがある。 | ||||||||
第3章 生と死、そしてその中間に位置するもの | ||||||||
地球の生命は代謝し、複製し、進化するものであり、液体の水、脂質、炭水化物、核酸、蛋白質からできている。その生命の状態(生死)は分明ではなく中間が存在する。 | ||||||||
第4章 生命はどこでどのように生まれたのか──42億(?)年前〜35億年前 | ||||||||
生命の起源については諸説ある。現在分かっている最初の生命は34億年前に現れた硫黄に頼る好熱細菌である。 | ||||||||
第5章 酸素の登場──35億年前〜20億年前 | ||||||||
光合成を行う生物(シアノバクテリア)が酸素を増やした。 始生代(酸素がない時代)の生物は、おそらく、メタンを利用していたが、「紫外線をきっかけとして高層大気、氷河に発生した酸素」への耐性を持つようになった。 酸素発生(大酸化事変)は少なくとも22億年前には発生していた。 (仮説) @シアノバクテリアは水を直接利用するように進化 A二酸化炭素とメタンを減らすようになった Bスノーボールアース発生(冷却化による) C酸素を利用する生物(例:ミトコンドリア)が登場 D21億年前には酸素が極度に増大する ECのためにバランスが取れ始める F火山活動のため二酸化炭素の増加があり Gスノーボールアースが終わる H大気のバランスが成立し、真核生物の登場 |
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第6章 動物出現までの退屈な10億年──20億年前〜10億年前 | ||||||||
酸素を放出する生物を硫黄を利用する生物が邪魔していたため、酸素が不十分だった。このため、動物は出現しなかった。多細胞生物の登場は22億年前だったが、このため、10億年前になっても動物はいなかった。(*) やがて、大陸の面積が増え、海に流れ込んだ鉄が硫黄と反応したことで、硫黄が利用しにくくなり、酸素を放出する生物が優勢になった。 (*)ただ、先カンブリア紀の微生物が10億年前複雑化(トゲをつけた)ことは捕食者の存在したことを表しているかもしれない。 |
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第7章 凍りついた地球と動物の進化──8億5000万年前〜6億3500万年前 | ||||||||
スノーボールアースは複数回起きている。 ◆1回目(23億5000万年前〜22億2000万年前)は、 シアノバクテリアが酸素を作り、これが温室効果ガス(メタンと二酸化炭素)を減らしたのが原因であり、酸素濃度上昇をもたらした。 ◆2回目(7億1700万年前〜6億3500万年前に2回)は、 @超大陸の分裂に伴う風化作用の激化、A植物の活動が二酸化炭素を減らしたことが原因の候補として挙げられ、この寒冷化が、大絶滅と孤立した小さな生物集団を作り、ゲノムの変化と動物の誕生を促したのかもしれない。 |
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「エディアカラ生物群」が、スノーボールアースの終了後の「アバロン爆発」で登場し、「カンブリア爆発」でいなくなる。捕食の形跡はないが、もしかしたら、動物が含まれていたかもしれない。 仮説ではあるが、「エディアカラ生物群」は、海底を覆い尽くす「微生物マット」を利用していたと考えられる。 |
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第8章 カンブリア爆発と真の極移動──6億年前〜5億年前 | ||||||||
化石記録に動物が発生するイベントをカンブリア爆発と呼び、現在ではカンブリア紀を5億4千200万年前〜4億9500万年前と定めている。 カンブリア爆発の時期の主要な動物は節足動物であった。節足動物は新奇性(大きな体制変化)生み出しやすい4つ条件(@既存部品の利用、A多機能性、B反復性、Cモジュール性)を満たしている。 進化発生学は、モジュールを変化させるスイッチをある遺伝子が司っており、形態変化に必要な遺伝子は爆発の5000万年前から備わっていたとも説明している。 ビック5の1つカンブリア紀末の大量絶滅(SPICE)(重要単語参照)は、低温、高酸素が原因だった。この低温、高酸素は、火山の噴火、急激な大陸移動による真の極移動(重要単語参照)が原因と考えられる。 |
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第9章 オルドビス紀とデボン紀における動物の発展──5億年前〜3億6000万年前 | ||||||||
酸素濃度は、「生物の多様性」(「生物のカテゴリーの数と集合」)と比例し、「新たな分類の誕生率」と反比例しているようだ。 オルドビス紀末には、ビッグ5の1つである大量絶滅が発生した。原因として急激な温度低下が想定されているが、真の極移動の可能性がある。 |
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第10章 生物の陸上進出──4億7500万年前〜3億年前 | ||||||||
植物の上陸が地形と土壌、そして大気を変えた。(酸素濃度も高くした。)(動物の上陸には、植物の上陸が前提となる。) 植物の陸上生活に有利に働く「葉」の「気孔」は乾燥に弱い仕組みである。二酸化炭素が高いと、温度が上がり乾燥しやすくなるので、「葉の誕生」には、二酸化炭素の低下が前提だった。 植物上陸後は、風化が進み、二酸化炭素が減り、寒冷化が進んでいった。 動物が上陸するには水分を失わず、酸素を取り込む仕組みが要るが、節足動物が上陸の先陣を切った。酸素濃度が上昇したことが動物の上陸を促した。上陸には2つの波があるが、この2つの間に上陸が続いていたかどうかは不明である。脊椎動物では両生類が最初に上陸した。 |
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第11章 節足動物の時代──3億5000万年前〜3億年前 | ||||||||
動物の大きさは(外骨格以外に)呼吸器に制限される。石炭紀からペルム紀にかけては並外れて高酸素だった。このため、特に呼吸器(気管)に大きさが左右される昆虫が巨大化した。 酸素濃度が高かったのは、還元された炭素や硫黄含有鉱物の埋没率が高かったためである。これは当時栄えた植物の根が浅く倒れやすく、それを分解する細菌がいなかったためである。また、酸素濃度が高いためしばしば森林火災発生した。 |
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この高酸素により陸に適応した羊膜卵を持つ動物が発生し、石炭紀前期が終わる頃、3つの系統に分かれた。無弓類(亀類)、単弓類(哺乳類)、双弓類(他の爬虫類。後に鳥類)である。分岐当時、低温かつ高酸素だったことが、体温調節などの特徴に影響を与えた。 また、高酸素は脊椎動物についても大型化を促したと考えられる。 |
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第12章 大絶滅──酸素欠乏と硫化水素──2億5200万年前〜2億5000年前 | ||||||||
ペルム紀末の大絶滅は全種の9割もが消滅した惨事で、陸でも海でも起きた。期間はたった6万年ほどと推定されている。 原因不明だが、少なくとも一因は酸素濃度低下と考えられ、生態系の痛手が大きく回復が遅れたことは確かである。この環境変化に対応して新たな生物が多数誕生した。 本書では、原因として温室効果絶滅説を採りたい。(重要単語参照) |
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第13章 三畳紀爆発──2億5200万年前〜2億年前 | ||||||||
三畳紀には、多様な生物の誕生が見られた。これは、@生物がいない空間が増えたこと、A酸素濃度が低く生物の異質性が高まったことによると考えられる。この時期に哺乳類と恐竜が誕生した。 動物の代謝は温度に比例して高くなるので、気温が高く、酸素濃度が低い三畳紀の環境は厳しかった。これに対応して、例えば、海生爬虫類が増えた。(逆に、酸素濃度が上がると陸上の恐竜が増えた。) 酸素濃度はT−J境界近くで過去3億年間で最低となり、三畳紀後半では恐竜を除く陸生脊椎動物の大半が絶滅した。二酸化炭素(とメタン)の増加、気温上昇、低酸素で絶滅が起きたとのシナリオが想定できる。(洪水玄武岩が噴出) |
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第14章 低酸素世界における恐竜の覇権──2億3000万年前〜1億8000万年前 | ||||||||
恐竜は低酸素に適応したいくつもの特徴を持っている。例えば、二足歩行(*)、気嚢(**)。 恐竜は時代により体制を変化させたが、その要因の1つは酸素濃度であり、例えば、ペルム紀後期から三畳紀にかけての「低酸素で高温の環境」が「胎生と柔らかい卵」の進化を促した。 (逆にジュラ紀後期から白亜紀は酸素濃度が高いので恐竜は硬い卵を進化させた。) (*)呼吸と運動を同時にできるので捕食に有利 (**)気嚢システムを持つ鳥類は哺乳類より33%酸素を効率的に摂取する。 |
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第15章 温室化した海──2億年前〜6500万年前 | ||||||||
中生代の海では大きな変化が起きていた。温水は酸素濃度が薄いのに大気の酸素も薄かったので、海は低酸素状態だった。その中で多様な生物が生息していた。例えば、アンモナイトは低酸素に最も適応した動物の1つ。中層水域では、小型の節足動物からなるDSL(重要単語参照)が白亜紀に誕生したが、これを食料とするアンモナイトが出現した。捕食者、被捕食者は競って進化した。 | ||||||||
第16章 恐竜の死──6500万年前 | ||||||||
「恐竜絶滅の原因が隕石である」ことの有力な証拠は@境界でイリジウムが発見されたこと、A衝撃石英が発見されたことであり、大火災の痕跡も残されている。ユカタン半島でのクレーターの発見は決定的だった。衝突後にはブラックアウト、酸性雨、冷却、地表への太陽エネルギーの減少、降雨の減少、岩石による火災が絶滅につながった。 隕石衝突は1回、その前に世界的な海水面の変化が2回起きた。隕石衝突箇所には硫黄が多く、隕石にも硫黄が含まれたために大気の致死性を高めたと思われる。 当時は火山活動により膨大な量の玄武岩が地球内部から吐き出されており、それが真の極移動を引き起こした可能性が高い。これが世界を弱らせ、隕石がとどめを刺した。 |
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第17章 ようやく訪れた第三の哺乳類時代──6500万年前〜5000万年前 | ||||||||
哺乳類は三畳紀に誕生し、T-J境界、K-T境界を生き延びた。 暁新世には、大量絶滅の穴を巡って新種が多く誕生した。 暁新世ー始新世境界温暖化極大イベント(PETM)ではメタンが原因となった。海洋の深層が温暖化し酸素濃度が低下し、底生生物が絶滅した。陸上でも絶滅は起きていた。 始新生から中新生にかけて徐々に寒冷化し、季節性が生じ、氷床拡大に伴う海面低下、乾燥化、大気の変化が起きた。 二酸化炭素は長期的には減少している。従って、寒冷化が進む。これに適応するため、効率的な光合成が生まれた。 |
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第18章 鳥類の時代──5000万年前〜250万年前 | ||||||||
鳥類の起源については、中国で多数の化石が出土したことにより、恐竜と同じ祖先から生じたとする説(恐竜起源説)が優勢である。 DNAの解析により現生鳥類が属する新鳥類は白亜紀には分岐していたことが判明した。 ちなみに、新生代中期に恐鳥類が台頭したが、足が速かっただけでなく、頭が大きいことから知的な動物だったかもしれない。 |
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第19章 人類と10度目の絶滅──250万年前〜現在 | ||||||||
本書では大絶滅を次の10回と数えている。(PETMは小規模なので含まない) @大酸化事変 Aクライジェニアン紀(スノーボールアース) Bエディアカラ紀(捕食者) Cカンブリア紀(SPICE) Dオルドビス紀(寒さか海水面変動) Eデボン紀(温室効果) Fペルム紀(温室効果) G三畳紀(温室効果) H白亜紀(温室効果と隕石衝突) I更新世〜完新世(気候変動と人間活動) 現生人類は35000年前に今の姿になり緩慢に世界を征服した。 1万5000年前〜1万2000年前には大型哺乳類の多くが絶滅した。原因は人類とする説と気候変動とする説がある。いずれにせよ大型哺乳類の絶滅は時間の問題であり現在は植物や鳥類、昆虫が絶滅に向かう段階にある。 |
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第20章 地球生命の把握可能な未来 | ||||||||
未来は偶然に左右される要素があるので予想できない。しかし、地球と太陽の物理的特性の変化については予測できる。 75億年後には太陽は赤色巨星となり火星まで飲み込まれる。地球が居住可能であるためのメカニズムにエネルギーを与えるのは太陽と地球であり、この2つの位置関係により居住可能な範囲が決まる。太陽光の強度が高まることで5億〜10億年後には地球はこの範囲をはずれる。だが、それ以前に二酸化炭素の不足(生物が作った骨格をプレートが地球内部に引き込む)をで生命は絶える。最終的に生き延びる場所は地球上にはない。 |
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★重要単語 | ||||||||
地質時代区分(抜粋) | (単位:100万年前) | |||||||
顕生代 | 0 | 542 | デボン紀 | 359 | 416 | |||
新生代 | 0 | 66 | シルル紀 | 416 | 444 | |||
新第三紀 | 0 | 23 | オルドビス紀 | 444 | 488 | |||
古第三紀 | 23 | 66 | カンブリア紀 | 488 | 542 | |||
中生代 | 66 | 252 | 先カンブリア時代 | 542 | 4567 | |||
白亜紀 | 66 | 145 | 原生代 | 542 | 2500 | |||
ジュラ紀 | 145 | 200 | (エディアカラ紀 | 542 | 635 | ) | ||
三畳紀 | 200 | 252 | (クライオジェニアン紀 | 635 | 850 | ) | ||
古生代 | 252 | 542 | ||||||
ペルム紀 | 252 | 299 | 始世代 | 2500 | ? | |||
石炭紀 | 299 | 359 | 冥王代 | ? | 4567 | |||
炭素の短期的循環 | 第2章 | |||||||
植物の生命現象: 光合成で植物の体内に閉じこめられる。 →生物のエネルギーとなり得る。 →呼吸によって酸化されると二酸化炭素となる。 →土に埋もれると循環から外れる。 |
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炭素の長期的循環 | 第2章 | |||||||
短期的循環より強力。岩石から海洋または大気への変換、とりわけ石灰岩が重要。 骨格(炭酸カルシウム)が岩になりプレートテクトニクスの働きで地表の下に潜り、やがてマグマとなって地表に出る。 |
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惑星サーモスタット | 第2章 | |||||||
火山からの炭素増加>温室効果ガス増加>気温上昇> 化学的風化作用増加>温室効果ガス減少>気温の上昇が止まる> 化学的風化作用減少>石灰岩生成量が減り、地表下に潜る量減少> 火山からの炭素が減少>気温下降>珊瑚礁など減少>炭素使用料減少> やがて、炭素が蓄積され、最初に戻る |
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SPICE(後期カンブリア紀の正の炭素同位体変動) | 第8章 | |||||||
寒冷、高酸素(急上昇)での絶滅。三葉虫のかなりの割合が死滅。 海底への有機物の大規模な埋没が発生。 真の極移動が原因か? |
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真の極移動 | 第8章 | |||||||
自転軸の位置が変わる事象。惑星上の質量が急激に変化することで起こり得る。例えば、プレート運動に関わる構造が現れたり消えたりすることによっても起こる。 この時、高緯度でメタンをため込んだ大陸が赤道に向かって移動すると温暖化につながる。 |
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温室効果絶滅 | 第12章 | |||||||
酸素の多い表層水と硫化物の多い深層水は通常分離している。海洋が低酸素だった時期に深海の硫化物の濃度が限界を超えると海面に浮上し、更に大気中にも流入する。 温室効果の推進により硫化水素の致死性が高まったことに加え、オゾン層が破壊されて危険なレベルの紫外線が降り注いだ。、これにより海でも陸でも絶滅が起きた。 特に、ペルム紀末は低酸素のため低地での競争を高め絶滅をもたらす側面もあった。 |
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DSL(深海音波散乱層) | 第15章 | |||||||
多種多様な浮遊・遊泳動物の密集したもので、日中は岸から離れた水深600〜800メートルの場所で縦横深さが数百〜数千キロメートルの塊として広がっている。 日が暮れると浅瀬に上昇する。白亜紀に登場した。 |